人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「始めての発表会Ⅱ」

第10回

「始めての発表会Ⅱ」            
発表会は、ネガポジというライブハウスで催された。

地下のライブハウで、ここでシャンソン歌うの・・?という感じで、ロッ

クやブルース・JAZZにこそ相応しい雰囲気の店だった。

と、いうのもやはりシャンソンというとキレイなドレスを着て奥様方が

歌うというイメージがあったからだ。

他の生徒さん達とは、この日に始めて顔を合わせた。発表会は一部

と二部に分かれて、それぞれ1曲づつ合計2曲歌った。くじ引きで順

番を決めて、まず自己紹介をして曲の名前をいい、歌うという形を

取っていた。

その頃の私は歌詞を覚えるなんてとんでもなく、堂々と譜面台を置

いて歌詞を見ながら歌っていた。歌詞を覚えないとダメだといわれ

ても、どうしても覚えられないし、覚えたとしても緊張で忘れてしまう

だろうというのが私の言い分だった。

人前で歌うのはとても緊張することであった。歌っている人も

観客なんだから。皆、緊張しているんだから大丈夫。と、言われても

なかなか落ち着けない。たしかに、発表会といえども、観客は殆ど無

く、生徒が大半だったように思う。

しかし、同じように歌を習っているもの同士の前で歌うというのも緊張

するお互いあら捜しをするわけではないと解ってはいるが、相手が歌

詞を忘れたり、音程をはずしたりすると、自分のことのように痛い思い

をした。

緊張というのは伝染する。一人がギンギンに緊張していると、それが

全員に伝染し、しまいに伴奏者まで緊張してしまう。

出演者の緊張がこちらまで伝わり、見るほうも緊張して肩に力が入

っていた。

私も死ぬほど緊張しながらステージにたった。

マイクを持つ手が震えて、自己紹介する声も震えていた。そして、

その震えを見てまたよけいに緊張して今度は脚が震えた。その震え

を隠すためにやたらと体を動かしながら歌ったような気がする。

しかし、一度ステージに立って歌い始めてしまうと、途中からは緊張

するということすら忘れて歌っていた。そして、気がつけば歌い終わ

って拍手をもらっていた。嬉しいことに上司が花束まで持って来て

くれていた。

この時の発表会がステージに立つ魅力を私に教えてくれた。

ステージに立って歌う。自分の今までやってきたことを、せいいっぱ

い表現する。

これが私を虜にした。

歌い終わってあの拍手をもらう瞬間、それは何物にも変え難い!
by sarah000329 | 2005-01-26 09:42 | デビューするまで
<< 初ライブを終えて レッスン >>